Density Matrix Exponentiation
はじめに
Density Matrix Exponentiationは、密度演算子をハミルトニアンとする時間発展演算子を量子状態に作用させる際に使われるテクニックである。
微小時間への分解
を十分大きな数として、と置くと
と書ける。つまり、微小時間の時間発展を回繰り返すことを考える。時間発展させる量子状態をとすると、後の状態は
となる。この状態に対応する密度演算子は
である。、と置くと
を得る。を級数展開して上式に代入すると
となる。は微小量であるから、これの1次までとり近似する。
この近似式をユニタリー演算子だけを用いて作る手順が、Density Matrix Exponentiationである。
Density Matrix Exponentiation
最初に、同じ数の量子ビットからなら2つのレジスタA,Bを考える。Aレジスタに密度演算子を、Bレジスタに密度演算子を振幅エンコーディングする。
を考える。これが2つのレジスタ間の状態を交換することは以下のように確認することができる。いま
とすると
となり、確かにAレジスタとBレジスタの内容が交換されたことが分かる。同じ計算を繰り返せば
を示すことができる(元の状態に戻るということ)。
さて、式(2)と(3)を用いた次式を考える。
式(4)から
が成り立つので、これらをに代入すると
を得る。いま
が成り立つので
を得る。レジスタAの空間だけでトレースを取る。
いま
が成り立つ。右辺はすべてレジスタBの空間での量である。従って
を得る(添字は省いた)。を十分小さな量としているので、の1次までの量で近似すると
となる。これは求めたかった式(1)である。